「置いていかれた」って思った夜は、電気消して寝るだけにした

Blog

夜に“追う”のをやめる――何もしないという選択

タイムラインに並ぶ「新しい職場」「新しい恋」「引っ越し」の写真。光の報告が続くほど、部屋の明かりは薄く感じる。置いていかれた――その言葉が喉の奥で丸まり、指はSNSをさらにスクロールする。けれど、その行為は追いかけるほどに心拍だけを上げ、自己否定の声を肥大させる。だからあたしは、夜に限っては“追わない”。電気を消す、スマホを手の届かない場所に置く、深く息を吐く。行動しない勇気は、勢いで動く勇気より難しい。でも、暴れない夜は心のアザを増やさない。回復のための時間も、ちゃんと仕事だと位置づける。

意思だけに頼らない工夫も要る。寝室には本と水だけを置き、仕事道具は別室へ。ブルーライトはオフ、アプリのアイコンはグレースケール。ベッドから届かない棚にスマホを置き、通知は全面オフ。眠る直前に「今日の最小の良かった」を一行だけ書く。未完は能力の欠如ではなく、継続者の証拠――そう言葉にして、蓋をして眠る。

朝にだけできる再起動――環境・最小完了・身体

朝の空気は、昨夜の劇場の幕を静かに下ろしてくれる。あたしは朝だけの手順を決めた。まず窓を開けて3回深呼吸、冷たい水で顔を洗い、部屋の温度と匂いをリセット。午前中はSNSを開かず、メールの初回チェックは11時と決める。視界に入る情報量を絞るほど、心の音量は下がる。

次に「最小完了」をひとつだけ紙に書く。大きな成果ではなく、歩幅を取り戻すための着火点――見出しを1本磨く、参考URLを3つ捨てる、誤字を10個直す。終わったら終了で構わない。達成感は小さくていい、連続性だけを重視する。身体にも起動の合図を送る。鼻から4秒吸って6秒吐く、肩甲骨を寄せて離す、ふくらはぎを押す、足指を開閉する。体が静まると、思考の濁りは沈殿し、判断が戻ってくる。湯を沸かし、温かい白湯を一口。体温が上がれば、やる気はわずかでも動く。

通知設計は“心の耳栓”だ。おすすめ表示は切り、通知は2回の時間帯にまとめて処理。フォローは季節ごとに棚卸しし、いまの自分に要らない刺激は遠ざける。受信量を下げるのは逃避ではない。焦りのエコーを減衰させ、仕事の芯へ戻るための環境デザインだ。

比較の物語を書き換える――自分の線路に戻る

「置いていかれた」は比較が紡ぐ物語だ。物語は書き換えられる。あたしはA4一枚に“企画の芯”を書く。「何を、誰のために、どの切り口で」。他人の朗報で心が揺れたら、紙の前に立って声に出して読む。芯に戻る行為は最強の鎮静剤になる。他人の成功は一枚岩ではない。切り口、継続時間、発信頻度、運、関係性――借りられるのは切り口と頻度くらいで、運と関係性はコピーできない。だから、妬みの熱を作業計画に変換する。

祝福の“筋トレ”も効く。週1回、尊敬する人の良さを100字で言語化して送る(返事は要らない)。心の柔軟性が育つほど、他人の成功は“参考資料”に変わる。日次では「Goodログ」を三つ書く。「誤字を20個直した」「見出しを2本磨いた」「風呂に入って寝た」。進みは小さくても、事実は静かに積もる。音が引いたあとに残る静けさは、作業の最高の土台だ。静けさの上では、粗がよく見え、次の一手も素直に決められる。

「無理に追わんでも、夜は明ける。」

タイトルとURLをコピーしました